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★灰人、いつかの終末にて

書店を題材にした掌編、第4弾。
回は趣向を変えてファンタジー寄りです。
荒廃と妖精がキー・ヴィジュアルとなっております。

**********


 伽藍堂樹木〈がらんどう・いつき〉の足が、ガラス片をくだいた。
 建物の入り口に扉はなく、その名残である材木が床に散らばっている。
 荒れ果てた空間は、元来の機能や意味を、とっくに失っていた。
 ここにあるのは、中身のない、ただの形骸だ。
 サビやカビやホコリ……荒廃のにおいが鼻をつく。
「やはり書店だったか」
 つぶやき、十字弓〈クロスボウ〉に巻きつけた懐中電灯で、なかを照らす。
「案外、広いな」
 奥は闇に包まれて端が見えず、ドーム状の天井は高い。
 本棚の多くが引き倒され、行く手を阻む障害物となっている。
「まるで死体の山だ」
 床は一面、積み重ねられた本で埋まっていた。
 探索には時間がかかりそうだ。
「伽藍」
 耳もとで声。
「なにか、います。気をつけて」
 声の主は、塵芥〈チリアクタ〉だ。彼女の手が、軽く耳に触れている。
「久々の獲物だな。そろそろ空腹に耐えかねていたところだ」
「よかったですね」
「ほんとうに、いるんだろうな? 期待させておいての空振りは、なしだぞ」
「チリアちゃんが言うなら、まちがいないっす!」
 反対側の耳に、べつの声が響いた。灰燼〈クァイシン〉だ。

「ちょちょいと、あたしが偵察してくるっすぁー!」

 そう言うやいなや、彼女は伽藍の肩から飛び立った。
 伽藍の手のひらサイズほどしかない小さな体躯に、半透明に光る羽を生やしている。
 羽が動くたび、周囲の微粒子ごと空気が揺れた。

「あ、おい、クアイ──」

 編んだ長い髪をなびかせ、止める間もなく、奥の空間へと飛んで行ってしまう。

「ったく……」
「ごめんなさい。困ったものですね」
「気にするな、もう慣れた」

 伽藍の肩の上で、すとんと腰を下ろしたチリアに応える。
 彼方種〈アチラシュ〉の少女の、ふわふわした金髪が視界の隅で揺れた。

「すごい埃ですね……ケホッ」

 チリアがどこからか布を取り出し、自身の口に巻いた。
 清楚系キャラを自負している本人には言わないでおくが、まるで盗賊のような見た目だ。

「クアイ」

 先行突撃した彼方種のすがたをさがす。

「どこだ、クアイ」

 チリアの言葉が正しく、「ある」のだとしたら。
 ここは亜ノ万理〈アノマリ〉──なにが起きても不思議でない場所だ。
 慎重に進みながら、足もとの本を照らす。

「どうだ、ありそうか?」
「ううん──反応はないですね」
「もっと奥?」
「おそらくは」

 肩のチリアが答える。彼女が言うなら、そうなのだろう。
 彼方種は、感応力が人より高い。

「伽藍」

 チリアの手が、ふたたび耳に触れた。

「すでに敵の領域です」

 わかってる、と伽藍はうなずく。
 十字弓をかまえた。

 すこしずつ歩を進め、建物のおそらく中央付近までたどりついたとき。

 突如として、空間に変化があった。
 もう電源も通っていないはずの壊れたスピーカが、ひび割れた曲を奏ではじめる。
 あまりの音量に、耳をおさえた。
 くだけたランプが、幾度も明滅をくりかえす。

 伽藍は、全神経を集中させ、襲撃に備えた。
 光のあいだの闇、騒音のなかのわずかな音、そこに敵のすがたをさがす。

 敵……そう、敵だ。
 すくなくとも、目に見えて、打ち倒すことのできる、明確な敵。

 音がやんだ。光も消える。

 静寂と暗黒が、空間を支配した。
 十字弓に装着した懐中電灯が、唯一の光源だ。

「伽藍!」

 チリアがさけぶ。

 反応が遅れた。
 ふりかえろうとしたところで、足もとの本が急に跳び上がり、伽藍の手を打った。
 砂塵が舞う。
 十字弓が弾き飛ばされ、懐中電灯の光が回転しながら周囲を照らし、離れた位置に落ちる。

 衝撃による誤作動だろう、十字弓から矢が放たれ、運悪く伽藍に向かってきた。
 暗闇でよく見えなかったが、空を切る音は聞こえた。
 上半身をそらし、なんとか、それを避ける。

 武器と明かりを失って、それでも伽藍は身がまえた。
 敵に背を向けるのは得策ではない。

 分厚い本が、その表紙と裏表紙を使って羽ばたき、宙に浮いていた。
 ページの合間から、まるで人間のもののような骨の手を三本も生やしている。

 この空間を支配している敵──物離素〈モノリス〉だ。

 その手のひとつが、見覚えのある生きものを捕らえていた。

「はなせーかいほうしろー」

 クアイが暴れていた。が、やがて疲れたのか。

「無念っす」

 と、ぐったり動かなくなった。

「なにやってんだ……」

 伽藍はため息をつき。

「チリア」

 こまかく指示するまでもなかった。
 彼女は伽藍の肩から飛び立ち、全身からまぶしい光を放った。

 彼方種は、自身のからだを発光させることができる。
 が、カロリーを大量消費するとのことなので、ふだんは、ひかえさせている。

 チリアの放つ光で、モノリスがひるんだ。

 伽藍は後方に跳んで、十字弓をつかみとった。
 それと同時にモノリスが立ち直り、伽藍に向かって飛来してきた。

 とっさに、急接近してきた敵を十字弓で殴りつける。

 かなりの速度と衝突したため、伽藍も衝撃で後方に倒れこんだ。
 背負ったリュックのおかげで、背中を打ちつけずに済む。

 モノリスは反対側に吹き飛んで本棚のひとつに衝突し、それを砕きながら地に落ちた。

「ぁわーっ!」

 モノリスといっしょに飛ばされたクアイの悲鳴がとどろいた。

「まだ生きてるか?」

 スティール製の矢を取り出しながら、声をかける。

「もちのろんっす……」

 敵が起き上がるまえに、伽藍はすばやく、矢を装填した。
 起き上がる時間のロスを考えて、攻撃準備を優先。
 尻をついたままの姿勢で、かまえる。

「あたしにかまわず、やっちゃってくださいっす!」
「もとより、そのつもりだ!」
「ひどいっす!?」

 くずれた本棚のなかから、モノリスが飛び出してきた。

 骨の指のあいだから顔だけのぞかせたクアイは、だーっと涙を流している。

「うああん、助けてくだせぇっすぅ」
「泣くな!」

 狙いをつける。

 モノリスが、目で追うのもやっとの速度で上下左右に揺れ動きながら、向かってくる。
 骨の手による締めつけが強くなっていくのが、伽藍には見えている。

「苦しい──もう、もうダメっす」
「落ち着け」

 伽藍は静かに言った。

「いま、助ける」

 引き金を引いた。

 発射した矢は、正確に、モノリスの本体部分を貫いた。

「クアイ、脱出しろ!」

 彼女は、骨の手を蹴飛ばし、こちらへ飛翔してきた。

 直後、周囲のなにもかもを巻き込むかたちで、モノリスが爆発した。
 虚無爆発。
 漆黒の渦──球状の無が、まわりの床や本棚を、ごそりと、えぐりとった。

 地面がクレーター状に割れたことで、床が傾く。
 伽藍はからだを支えようとしたが、なすすべなく滑り落ち、空いた穴の直前でぶら下がった。
 穴の下には、なおも渦巻いている無が確認できた。
 吸引力が伽藍を襲う。小型のブラックホールみたいなものだ。

「しっかり、伽藍!」
「うおお、全力っすー!」

 彼方種のふたりが、伽藍のそれぞれ両脇にもぐりこみ、自分たちの浮力で持ち上げようとしていた。
 羽を激しく上下させている。

 伽藍自身も、十字弓を前方に投げ出し、両腕に力をこめて這い上がろうとするが、うまくいかない。
 何冊もの本が飛んできて、伽藍をかすめ、背後の穴へと吸いこまれていった。

「クアイ、チリア、矢を! 俺は、もうしばらく耐えられる!」

 彼女たちは、すぐに行動した。
 伽藍を支えるのをあきらめ、背中のリュックのファスナーをさぐり、なかから矢を抜き出す。
 それをふたりがかりで持ち上げ、十字弓のところまで飛んでいった。

 伽藍がこの場に持ちこんだ十字弓や彼方種たちは、虚無の吸引力の影響下にはない。
 あれが欲するのは、その空間と、伽藍という人間だけだ。

 クアイとチリアは、自分たちのからだよりも大きな十字弓に、矢をセットし始めた。

「どうするんだったっすかね」
「こっちに引っ掛けるのですよ」
「ああ、なーる!」

 そんなやりとりが聞こえてくる。

「急いでくれ!」

 いまや、両手の握力だけで、伽藍はぶら下がっている。

「伽藍!」

 チリアが飛んできた。クアイと協力して、十字弓を運んでいる。

「準備できました!」

 彼方種たちは、伽藍の頭上まで飛んでくると、十字弓を落とした。
 伽藍は片手を離し、それをキャッチした。

「あっ」

 頭上で悲鳴が聞こえた気がした。
 だがいまは、やるべきことをやらねばならない。

 からだが支えを失い、穴へと一気に引きこまれる。

 虚無爆発が、穴の中心で伽藍を手招きしている。
 なつかしい人の顔をして、なつかしい人の声で呼ぶ。

「伽藍」

 そちらに向かって吸い寄せられながらも、伽藍は両足を駆使して体勢を立て直し。
 十字弓をかまえ、撃った。

 矢が、まっすぐ虚無爆発の中心へと沈みこんでいく。

 やがて。 
 その中心部から、虚無爆発にひびが入った。

 ふしゅううぅぅ、と。
 ぱんぱんにふくらんだ風船から空気が抜けるような、そんな音がこだます。
 腐臭が鼻先をかすめた。

 虚無爆発は勢いを失い、収束していき、そして。
 伽藍の肉体が接触してしまう寸前で。

 完全に、消失した。

「伽藍」

 一瞬、彼女の幻影を見る。
 虚無に近づきすぎたせいかもしれない。

「伽藍」

 まばたきする。
 すると、次の瞬間には、なにごともなかったように。

 周囲は、ただの荒れ果てた書店にもどっている。
 床に穴など空いておらず、戦いの痕跡はのこっていない。

 もちろん、彼女がいるはずもない。

 伽藍は両手をつき、吐き気をこらえた。
 床と顔面をつきあわせた姿勢で、深呼吸をくりかえす。
 よだれがこみあげてくる。
 かたく目をつむる。ひどい耳鳴りがした。

「──伽藍!」

 それは。その声は。

 ……だいじょうぶ、現実が見えている。
 瓦礫にまみれた、この世界。

 目を開ける。
 ノイズは去り、土に汚れたフローリングの床がクリアに見える。

「伽藍!」

 チリアの切迫した声にふりむくと、クアイが倒れていた。

「どうした」
「飛んできた本が直撃して──」

 チリアが言う。
 切迫感こそあるが、どこか冷淡な調子で。
 こういうとき、彼女たちが人間ではないことを、伽藍は思い出す。

「うう、しくじったっす……」

 クアイが、苦しそうにうめいた。

「しゃべるな、馬鹿」
「あたし、死ぬっすかね?」
「言うな」

 伽藍はリュックを投げ出して矢の一本をつかみ、自身の親指を突いた。
 傷口からは血が噴き出し、指の腹の上で、ぷくりとふくらんだ。

「ほら」

 クアイの口もとに、それを寄せる。
 小さな彼女のくちびるが、血の表面張力を割った。
 白い喉が、ごくりと動く。

「癒やすに足るか?」
「ああ──ああ──」
「おい、だいじょうぶなのか?」

 クアイが、こくりとうなずいた。

「林檎〈りんご〉」

 呼びかける。

「ちゃんと言ってくれ。もう、だいじょうぶなんだな?」

 そんな伽藍に。
 クアイは、いつもとはちがう表情で。
 はい、とかすれ声で答えた。

 そこに、だれかの面影を見る。見てしまう。

 しばらくクアイの様子を観察していたが、もう問題なさそうだと判断する。

「伽藍。いま──」

 チリアが口を開く。

「なんだ」
「名前を……」

 伽藍は答えず、散らかしてしまったリュックの中身を片づけた。
 矢も、保存食も、色褪せた写真も。

 ──顔は、クアイのほうが似ていた。
 性格は、チリアがイメージに近いが。実際のところ、クアイのような破天荒な面も、彼女は持っていた。

 彼方種とは、人間の亡骸から生まれる存在。
 ひとつの遺体から、対で発生する。

 それがどういうことなのか。だから、どうなのか。
 いまだ解明されていない。

 だから。
 似ている部分があるなどという「願望」に、意味などないのかもしれない。
 彼女たちに、なにも期待するべきではないのかもしれない。

 ……駄目だ。
 かなり憂鬱が進行している。

 伽藍は、目的のものをさがし、顔を上げた。

 いまいる位置からすこし離れたところに、本が落ちている。

 いや、本はたくさん落ちているのだが。
 そいつは別格だ。
 彼方種ほどの感応力がなくとも、はっきりと識別できる。

 伽藍は痛むからだを動かし、壁に肩を預けて立った。
 本に近寄り、手に取る。

 装丁のしっかりした、分厚い本だ。

 その表紙と裏表紙をつかみ、背表紙の部分から一気に引き裂いた。
 勢いあまって、紙が飛び散る。

「読書の時間だ」

 言って、その「肉」を食しはじめる。
 ちぎっては、口に詰めこんでいく。

 これこそが、ここに来た目的。

 憂鬱病、唯一の治癒手段だ。
 力を持った物語を食べることが。食べつづけることが。

 これでまた、死に至る病を、すこしだけ先延ばしにすることができる。

「どうして?」

 伽藍は、ふと疑問に思ってしまう。
 どうして、足掻く?

「……約束してしまったからだ」

 襲いくる憂鬱を払いのけ、自答する。
 ただ、それだけの、無意味な意味。この、なにひとつ、のこっていない世界。

 そうして、行為を再開する。
 噛めば噛むほど唾液が分泌され、紙を浸した。

 味がする。
 その感覚を言葉で表現することはできない。

 病に侵され、すべての味覚が失われたにもかかわらず。
 味が、する。

 飢餓が、うすれる。渇きが、潤う。
 心が、充たされる。

 いまも彼女がそばにいる、つねに自分を見てくれていて、そのご加護があるだなんて。
 そんな、色あざやかな幻想を、打ち砕いてくれる。

 彼女は、自分を呪ったのだ。これは呪いだ。

 伽藍は立ち上がり、リュックを背負いなおした。
 腰をかがめ、十字弓を持ち上げる。どこか、ゆがんだ箇所がないか、軽くチェックする。

「行くぞ。チリア、クアイ」

 右足を痛めてしまったかもしれない。やや引きずるようにして、歩きだす。
 彼方種たちが、そっと寄り添った。

 建物の外に出ると、冷たい風が出迎えた。

 雨が降り、路上の灰を濡らしていた。粒がアスファルトに弾け、空気中に霧散する。
 膝から下くらいの位置に、霧がたまっていた。建物が、かすんで見える。

 暗雲がたちこめ、ただでさえ色彩の薄い廃墟を、モノクロに染めていた。

「雨だな……」
「風邪をひいてしまうかもしれませんね。頭の上で、布でも広げましょうか?」

 チリアが提案する。

「このくらいの雨なら、なんとか飛べると思います」
「お前たちが濡れる」

 伽藍は周囲を見回した。

「傘でも、さがそうか」
「おお、三人で相合傘っすね!」
「あらステキ」
「ハーレムだハーレムだー」

 湿気た風が運んでくる、雨特有のカビくささ。

「あれは、ぺトリコールとジオスミンという化学物質からくるんだ」

 かつて、博識な彼女がそう言っていた。
 ロマンがない、と伽藍は笑った。

 もちろん、この世界にロマンなどなかった。
 ただ茫漠たる現実が広がっている。

「よし」

 伽藍は、ふりむいた。

「最初に傘を見つけたヤツの勝ちだ。勝者は、そうだな──王様ってことにしよう」
「王様?」
「ハーレムを手に入れる。ほかのふたりは、王様の言うことを聞かなければならない。どうだ?」

 チリアとクアイは、きょとんと顔を見合わせた。
 だが、次の瞬間には、スタートダッシュを切っていた。
 伽藍も負けじと動き始める。

 どこまでも灰色が広がる空の下。

 雨は、まだまだ、やみそうもない。



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